ソイルとは水槽に敷く低床の1つで、肥料分が豊富に含まれている特徴があります。さらに水質を弱酸性に保ったり、硬度を下げる等の効果も持っています。
水草にとっても良い働きをしてくれるんですよ。
ただ、キューバパールグラスやパールグラスなどの一部の水草は、弱アルカリ性・高硬度を好むため、水質が合わず育てることが出来ない場合があります。
また、ソイルには寿命があり、寿命がすぎたソイルは栄養分を使いきり水草に十分な栄養を供給できないだけでなく、ソイルの団粒構造が崩れ(粒が崩れる)、低床の通水性を悪化させてしまいます。
通水性の悪い低床は好気性バクテリアの繁殖を阻害してしまいます。
また、古くなったソイルは、ソイルの効果である弱酸性に傾ける力・硬度を下げる力が弱くなっていき、水草が育ちずらくなったり、コケが増えたりすることがあります。
なので、寿命の過ぎたら水槽は一度リセットして、新しいソイルに入れ替える必要がでてきます。
ソイルの吸着・イオン交換・ブレイクについて
ソイルを選ぶ上で「吸着」「イオン交換」「ブレイク」の3つの単語がよく出てくると思うので、これらの原理についてかんたんに解説します。
吸着について
例えば、四角構造の物質をソイル1粒で6つまで結合できるソイルがあるとします。
この画像は1粒のソイルを表現していて、穴が6つあるのが分かります。
次に四角構造には、「カルシウムイオン・マグネシウムイオン・カリウムイオン・アンモニウムイオン・ナトリウムイオン」の5つの物質があるとします。
また、四角構造の物質でも結合の優先順位があり、この画像の左上が一番強く結合し、右下にいくほど結合しずらい物質になります。
そして、ソイルは水中のこれらの物質と結合しようとします。
この現象を吸着といいます。
また、四角構造以外の物質とは結合することができません。
この画像では、ソイルにマグネシウムイオンとカリウムイオンが吸着しています。
イオン交換について
そして、ソイルと結合しているカリウムイオンにカルシウムイオンが近づくと、カリウムイオンとの結合を解き、代わりにカルシウムイオンと結合します。
結合には優先順位があるためです。
この現象をイオン交換といいます。
この画像は、カリウムイオン(黄)との結合を解き、カルシウムイオン(青)と結合している画像です。
ブレイクについて
また、立ち上げ初期は、水中のアンモアが多くなることが多いので、ソイルにはアンモニウムが多く結合しています。
そして、空いている穴には結合の優先順位が低いアンモニウムが多く結合している状態になります。
水中にアンモニウム以外の物質が多くなると、結合の優先順位が高い別の物質とイオン交換し始めます。
この画像では、アンモニウムがイオン交換の作用により、アンモニウムよりも優先順位が高い別の物質とイオン交換されています。
すると、アンモニウムがソイルに吸着されていた環境で、バランスを保っていたバクテリアが、急に水中に増えたアンモニウムを分解しきれず、水中のアンモニウムの濃度が急激に上昇します。
ソイルの作用により、急激にアンモニウムなどの毒素が増えた状態のことをブレイクといいます。
実際は、もっと複雑ですが、吸着・イオン交換・ブレイクの理屈はこうなっています。
ソイルの効果
ソイルにはpH・硬度を下げる働きがあります。
具体的にどのような原理でpH・硬度を下げるのか簡単に説明します。
pHは、水中の水素イオンの濃度が高いと、酸性に傾き、逆に低いとアルカリに傾きます。
それ以外にも、炭酸塩硬度(炭酸水素イオン(HCO3-)に結びつくカルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)の総量)が低いと酸性に傾き、高いとアルカリに傾けます。
硬度は、水中のカルシウムイオン(Ca2+)・マグネシウムイオン(Mg2+)の濃度が高いと硬度が上がり、低いと硬度が下がります。
そして、ソイルが水中に含まれているカルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)を吸着・イオン交換することによって、水中の硬度を下げ、同時にpHも下げます。
この画像は、ソイルに含まれているカリウムイオン(K+)とナトリウムイオン(Na+)をカルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)でイオン交換している画像です。
イオン交換の優先順位「H(+)>Ba2(+)>Ca2(+)(カルシウム)>Mg2(+)(マグネシウム)>Cs(+)>Pb2(+)>K(+)(カリウム) ≒ NH4(+)(アンモニウム)>Na(+)(ナトリウム)」(土壌コロイド(ソイル)の場合)により、結合の優先順位が低く、水槽に比較的多いKやNaを優先順位が高いCaとMgでイオン交換することで、硬度を下げます。
ちなみに、ソイルはマイナスの電荷を持っているので、陽イオン(プラス)のみと結合します。
また、NH4(アンモニウム)も水中に放出される可能性があります。
これらの作用は、イオン交換体(イオン交換する能力を有する物質)であるソイルのイオン交換によるもので、実際はもっと複雑です。
水中のアンモニアが多くなる立ち上げ序盤に活躍する効果として、ソイルがアンモニアを多少無害化された水草の養分にもなるアンモニウムと結合することで、水質の向上と水草の成長に期待できます。
アンモニアの電離式「NH3 + H2O → NH4(+) + OH(-)」により、
ソイルは、マイナスの電荷を持っているので、陽イオン(プラス)であるアンモニウムを吸着します。
※電離とは、イオン化と同義で簡単に言うと食塩(NaCl)を水に溶かすと溶けて見えなくなってしまう現象(電離式:NaCl→Na(+)+Cl(+))と同じです。
また、アンモニウムを吸着できないとイオン交換の優先順位「H(+)>Ba2(+)>Ca2(+)>Mg2(+)>Cs(+)>Pb2(+)>K(+) ≒ NH4(+)(アンモニウム)>Na(+)」(土壌コロイド(ソイル)の場合)によりNH4よりも優先順位が高い物質と交換されます。
これらの作用により、ソイルは水草に必要な栄養分を多く吸着しているため、水草にとって育ちやすい環境を作ってくれます。
リセットする時期について
ソイルの栄養分は、早くて1ヶ月、長くても半年程度でなくなるため、だんだん水草の生長が鈍化していきます。
同時期くらいに、ソイルの水質調整・浄化機能がなくなっていき、コケが目立つようになり、硬度とpHがだんだん上がっていきます。
この段階ではソイルの崩れは見られないので、リセットするよりは追肥と硬度・pHの調整をしていくほうが良いでしょう。
1年から2年、長くても3年ほど経つと、ソイルが崩れ始めだんだん泥状になっていきます。
そうなってくると、低床の通水性が悪くなり色々と問題が生じ始めてくるので、リセットした方がいいでしょう。
ソイルの使い方
ソイルは土を固めただけなので、使用前に洗浄してしまうと崩れ、ただの泥水になってしまうので、基本的に洗わずに敷きます。
水面にゴミが浮いてくる場合は、除去してください。
水槽のレイアウトによって異なりますが、水草の根張り・ソイルの効果を最大限に引き出すためにも厚さは、最低5センチ以上になるようにしましょう。
敷くときは後ろを高く、前を低くすると奥行きのあるレイアウトができます。
低床の掃除をするときにむやみにプロホースなどで、ざくざく挿すとソイルが崩れ、寿命が短くなることがあるので、ソイル表面の残り餌やフンを取り除く程度にするようにしてください。
ソイルの大きさ
ソイルには粒が1mmほどの小さいもの(パウダータイプ)や5mmほどの大きさ(ノーマルタイプ)を持ったものなど様々な大きさがあります。
大きさによって、どのような違いがあるのかまとめてみました。
ノーマルタイプ
大きなソイルは通水性に優れ、パウダータイプよりも硬く崩れにくい特徴があります。
しかし、粒が大きいせいでソイルとソイルの間に空間ができてしまい、水草が抜けやすいデメリットがあります。
特に、ヘアーグラス・ショートやグロッソスティグマなどの一部の前景草は非常に抜けやすいので、注意が必要です。
パウダータイプ
粒が小さいソイルは通水性がノーマルタイプよりも劣りますが、ソイルの間に空間が出来にくいので、水草が抜けにくくなる特徴があります。
しかし、パウダータイプは、小さいが故に団粒構造が崩れやすく、ソイル自体の性能がノーマルタイプよりも低いのが特徴です。
これらのことから、ソイルの選び方としては、ノーマルタイプを下に敷きパウダータイプを上に敷く、両方のメリットが得られる二種類を併用した使い方をおすすめします。
ソイルの種類
ソイルには大きさ以外にも、2種類のタイプが存在します。
種類によっては、水槽を壊滅させてしまうほど影響を与えるものもあるので、ソイル選びをする上で最も重要な部分になります。
また、人によっては扱いやすいソイルでも、自分が使ってみると扱いずらい可能性があるので、試行錯誤しながら自分の環境に合ったソイルを選びましょう。
栄養系ソイルとは
栄養分がある程度吸着された状態のソイルで、吸着系ソイルのブレイクに似た状態になり、元から含まれている栄養分を吐き出します。
ブレイクに似た症状(ソイルに吸着されている栄養分を水中に放出する)を見せるため、立ち上げの際は注意しないとコケどころか生体にも影響が出てしまう可能性があります。
しかし、その分栄養分が非常に多いので、栄養分を多く必要とする水草を育てたい場合は非常に効果的なソイルになります。
扱いずらいソイルもあるので、初心者の方は吸着系のソイルを使用し、ソイルの扱いが慣れて来たらこのタイプのソイルを使うといいでしょう。
また、栄養系ソイルと吸着系ソイルを混ぜる方法もあります。
ちなみに、栄養系だからといって、吸着系よりも吸着性能が低いというだけで、吸着性能がないわけではありません。
吸着系ソイルとは
アンモニア等有害物質を吸着する性能が高く、ソイル自体に含まれる栄養分が少ないのが特徴です。
栄養系よりも栄養分が少ないソイルなので、立ち上げ初期は水質悪化の原因となる有機物質が少なく、比較的早い段階で生体を入れることができます。
また、吸着系ソイルは「ブレイク」を起こすことがあり、生体に大きな影響を与えてしまうことがあるため、定期的なpH・亜硝酸の水質検査は最低でも行なってください。
いつもは0に近いのに急にアンモニアなどの有害物質が検出される場合は、ブレイクが起きている可能性が高いので、注意してください。
ブレイクの影響を少しでも抑える(ブレイクをずらす)ために2種類の吸着系ソイルを混ぜて使っている方も居ます。
また、栄養系よりも早い段階で水草の栄養不足がおきやすいので、水草の症状を見て適切な栄養分を追肥しましょう。
特に、大量の栄養分を必要とする水草の場合、その影響が顕著に出るので、注意してください。
おすすめソイル
ソイルには栄養分がずば抜けて高い物や吸着能力がずば抜けて高い物、平均的なものなど様々な特徴を持った商品があるので、有名なソイルとその中でも特にオススメできるソイルの3つ紹介します!
アマゾニア
栄養が他のソイルよりもずば抜けて高いため、立ち上げ初期はコケに悩まされることがあるソイルです。
また、原料の土の成分によって、初期は水が黄色っぽくなることがありますが、水換えをしっかり行なっていれば自然と透明に戻るので、そこまで心配はいりません。
これらのことから、一般的に他のソイルよりも立ち上げが難しいといわれています。
しかし、扱いが難しい反面、栄養分が非常に高いことから水草をメインでやっている方にはとても頼りになるソイルとなってくれると思います。
また、アマゾニアを含めADAの製品は、自社ブランド維持のために、通販で購入することが出来なくなりました。
メリット
- 栄養が豊富
- 長期間追肥の必要がない
- ソイルのブレイクがない
デメリット
- 立ち上げが少し難しい
- 苔が大量発生することがある
- 水の黄ばみが長期間出ることがある
コントロソイル
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他のソイルよりも水質を調整する能力が非常に高く、立ち上げ初期の時期でも水の透明度が高いのが特徴です。
さらに、キューバパールグラスや、ヘアーグラスショートなどの一部の水草と相性が良く、簡単に絨毯を作ることが可能です。
また、他のソイルよりも価格が安いのも特徴のひとつです。
しかし、ソイルの栄養分が少ないのか、要求栄養分が多い一部の水草は比較的早い段階で栄養不足に陥ることがあるので、しっかり追肥してあげましょう。
さらに、他のソイルよりも崩れやすくいのでパウダータイプを使用したい方は特に注意しましょう。
また、2種類のソイルを併用した使い方に対しても、高い効果が期待できるので、ノーマルタイプをコントロソイルで、パウダータイプを別の栄養分が多いソイルを使用するといった使い方でもいいかもしれません。
メリット
- 立ち上げ初期から生体がいれられる
- 価格が安い
- コケが大量に発生しにくい
デメリット
- くずれやすい
- ブレイクがある
- 栄養分の含有量が少ない
水草一番サンド
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水質調整の能力もそこそこ高く、ソイルの栄養分も非常に豊富にあるのが特徴です。
さらに、粒が非常に硬く、ソイルの寿命が長いのも特徴で、自分の環境では使用してから2年経ってもしっかりとした粒でした。
また、エビにとっても良い働きをするソイルで、ビーシュリンプをメインに飼っている方の中には、このソイルを使用している方も居ます。
しかし、栄養分が非常に多いのもあり、水草が少ない環境だとコケがたくさんでてしまうこともあるようです。
特に、立ち上げ初期は水草が少ないと、コケに悩まされるといった栄養系ソイルに似た症状もでる場合があるので注意が必要です。
さらに、栄養分は非常に多いのですが、すぐに溶け出してしまうのかは分かりませんが、栄養系よりは早い段階で肥料切れになるので注意してください。
個人的な感想になるのですが、このソイルを使用していますが、立ち上げ時には茶コケが少し出るだけで、殆どコケに悩まされることもなく、非常に安定した立ち上がりをしてくれました。
特に、要求する栄養分が多いグロッソスティグマやグリーンロタラは非常に繁茂してくれました。
名前のとおり水草をメインに考えている方には、一番オススメできるソイルです。
メリット
- 栄養が豊富
- 吸着能力が高い
- ソイルの粒が非常に硬い
デメリット
- 栄養分が早めになくなる
- 緩やかなブレイクがある
- 苔が大量に発生することがある